オガタ マキコ  ogata makiko
尾形 真規子

  • 所属   東京家政大学  栄養学部 管理栄養学科
  •     東京家政大学短期大学部  短期大学部 栄養科
  •     東京家政大学大学院  人間生活学総合研究科 健康栄養学専攻
  •     東京家政大学大学院  人間生活学総合研究科 人間生活学専攻
  • 職種   教授
言語種別 日本語
発表タイトル 糖尿病におけるミトコンドリア遺伝子の影響とMIDDの臨床
会議名 第68回日本糖尿病学会年次学術集会
主催者 日本糖尿病学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者岩﨑直子、中神朋子、尾形真規子
発表年月日 2025/05/29
国名 日本
開催地
(都市, 国名)
岡山
開催期間 2025/05/29~2025/05/31
学会抄録 糖尿病 Suppl,S45 2025
概要 糖尿病の成因を遺伝学的にみれば,糖尿病全体の90%を占める2型糖尿病と,約5%程度とされる1型糖尿病は,ともに多因子遺伝である.また,MODY(maturity onset diabetes of the young)を代表とする1 種類の遺伝子を原因とする糖尿病はメンデル遺伝である.さらにミトコンドリア遺伝子による糖尿病,MIDD(maternally inherited diabetes and deafness)は糖尿病の約1%を占め,ミトコンドリア遺伝による.MIDDは1994年にKadowakiらによって提唱された疾患概念であり,診断基準は糖尿病とミトコンドリア遺伝子3243番塩基のAからGへの置換(m.3243A>G)の保有である.一般集団におけるm.3243A>Gの頻度は400人当たり1人と報告されておりcommon variant に近い頻度である.18万人の大規模ゲノムコホート研究において,m.3243A>Gのヘテロプラスミー率が10%以上の場合,糖尿病,難聴,心不全のリスクが増加し,m.3243A>Gによる糖尿病リスクは2 型糖尿病リスクの影響を受けていることが報告されている.MIDDは母系遺伝, 両側性感音性難聴を特徴とし,そのほかに進行性のインスリン分泌低下, 若年発症,やせ型,多臓器にわたる症状の合併,乳酸・ピルビン酸の上昇などが診断の手掛かりとなる.表現型はヘテロプラスミーの影響を受けるため,同一家系内においても不均一で多様性が認められる.さらに,MIDDの15%に同じm.3243A>G を成因とするMELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and strokelike episodes)が合併すると報告されている.MIDDの診療においては心筋症・不整脈が全体の30%に認められるとされ,突然死も認められることから定期的なスクリーニングが望ましい.我々の22 例のMIDDのケースシリーズにおいても突然死が半数に認められた.治療に関しては日本糖尿病学会による遺伝子診断ガイド(第2版)によれば,MIDDのほとんどがインスリン治療を受けており,糖尿病診断からインスリン導入までの期間は平均3年とされている.OgataらはGLP1 受容体作動薬がβ細胞ミトコンドリア膜機能に保護的に作用することを見出しており,著しいやせを伴わない場合は選択肢となると考えられるが,使用に関しては数例の症例報告にとどまっている.ミトコンドリア病は全身の臓器に症状が出現することから,ミトコンドリア病マネージメントプランが米国ミトコンドリア医学会より提示されている.また,本邦においても,ミトコンドリア病診療マニュアル2023が発刊され,初めてMIDDに関する記載が盛り込まれた.MIDD患者は社会的偏見であるスティグマにさらされることが多く,QOL向上のために全身的なケアを提供する姿勢が求められる.